2026年3月更新
自然環境との共生は、気候変動対応と並び持続可能な社会の確立に向けてその重要性が高まっており、国際的な情報開示の枠組みづくりが本格化しています。
デンカグループは、ESG基本方針に「環境負荷低減と生物多様性の保全・保護」を掲げています。本方針のもと、事業活動に伴う環境への影響を把握し、生物多様性の維持・向上を目指してゆくことを目的に、TNFD※が発行した提言書に則して、対応を進めています。
2022年9月から、TNFDのガイドラインで推奨されるLEAPアプローチ※を用いて、自社の事業活動と生物多様性の接点を見出し、優先課題を把握するという観点で取組みに着手しています。また、デンカの各事業所(工場)は日本の各所に散在し、その周辺の自然環境は様々であることから、各事業所(工場)が持つ自然環境との接点を調査しました(2023年4月~2025年3月)。
具体的には、当社は自社事業活動において、生物多様性への影響を軽減および回避するための取り組みを実施しております。特に、夜間に昆虫が集まりにくい照明の導入や、敷地内の水路を定期的に清掃することで水質を改善するなどの対応をはじめとして、全社的な取り組みを行っております。
また、新しく土地を利用する、あるいは既存の土地利用の方法を変更する場合には、生物多様性への影響を評価し、負の影響を与える恐れがあると判断される場合、その影響を最小化するよう努めています。
国内9拠点を対象に、各拠点の操業と自然環境との接点等を把握する、ENCORE(※2)分析や現地調査(下記「自然環境予備調査」参照)を行ってまいりました。
ScopingとLocateでの調査・分析の結果、より優先的に取り組みを深化させるモデル拠点として青海工場を選定し、青海工場に係る依存と影響、その要因関係を整理しております。今後は結果(Evaluate)をふまえ、「優先地域」として指定した青海工場における周辺環境への施策として、夜間に昆虫が集まりにくい照明を導入することで生物多様性に対する負の影響を軽減する取り組みを実施しています。
また、「優先地域」である青海工場の水力発電所敷地内の水路を定期的に清掃することで水質を改善し、生物多様性に対する正の影響を増大させる取り組みを実施しています。
当社は 2022 年以降継続して、事業所における生物多様性リスクの定量的な評価を実施しています。
国内事業所9拠点について、それぞれ環境データ(工場周辺における生物多様性にとって重要な地域の有無、生態系の完全性が急速に低下している地域の有無等)を整理するとともに、立地や操業活動の観点から自然環境との接点を現地で確認する活動を継続しています。
また、地域に根差した取り組みを検討すべく、拠点が立地する行政との意見交換も進めており、現在はデンカイノベーションセンターが所在する東京都町田市と、希少植物保全のための活動について協議しております。
イノベーションセンターの立地環境の確認
渋川工場の排水経路の確認
千葉工場内の緑地環境
イノベーションセンター内に自生する希少種
五泉事業所に近接する河川環境
| 拠点 | 環境データ整理 | 現地確認 | 自治体ヒアリング | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 青海工場 | 〇 | 〇 | 〇 | 地域の自然環境、動植物について地元の有識者にインタビューを追加で実施 |
| 大牟田工場 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 千葉工場 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 美唄分工場 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 渋川工場 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 大船工場 | 〇 | 〇 | ― | 工場稼働停止予定のため自治体ヒアリングは不実施 |
| 伊勢崎(太田)工場 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 五泉事業所 (新潟工場、鏡田工場) |
〇 | 〇 | 〇 | |
| デンカイノベーションセンター | 〇 | 〇 | 〇 |
当社の事業活動によって生物多様性に影響を与える可能性について、環境省が運用している「環境アセスメントデータベース"EADAS"」やコンサベーション・インターナショナル・ジャパンのKBA調査の成果「KBAマップ」等を使用して生物多様性重要エリアとの近接状況を調べました。
調査対象は国内生産拠点から約半径5km圏内(美唄分工場のみ20km圏内)としています。
結果、以下9拠点のうち、5拠点において生物多様性重要エリアと近接していることを確認しました。
| 拠点 | KBAとの近接有無 | 保全すべき生物多様性エリア |
|---|---|---|
| 青海工場 | 〇 | 妙高、北アルプス |
| 大牟田工場 | 〇 | 有明海奥部 |
| 千葉工場 | 〇 | 東京湾 |
| 美唄分工場 | 〇 | 石狩川流域湖沼群 |
| 渋川工場 | × | - |
| 大船工場 | × | - |
| 伊勢崎・太田工場 | × | - |
| 五泉事業所 | 〇 | 越後平野 |
| イノベーションセンター | × | - |
また、イノベーションセンター内で自生している絶滅危惧種のキンラン・ギンランを保護するため、周辺に立ち入ることを防ぐ防護柵を設置し、10年以上株数の計測を継続しております。
当社は今後も、希少種や固有種を確認した際はそれらを保全・保護する取り組みを継続してまいります。
青海工場が該当するセクターでは、「水」「温室効果ガス」「汚染物質」「廃棄物」「生物種」のカテゴリーに関連する生態系サービスへの依存や、自然資本への影響が強いことを把握しました。そのような自然と青海工場の操業において接点がある地域は、特に注意が必要な地域として「優先地域」に特定しました。
| 依存/影響のカテゴリー | 依存/影響 | 依存している生態系サービス/影響をおよぼす要因 |
|---|---|---|
| 水 | 依存 | 水流調節 |
| 水 | 依存 | 水供給 |
| 水 | 依存 | 水の浄化 |
| 水 | 影響 | 水使用量 |
| 温室効果ガス | 影響 | 温室効果ガスの排出 |
| 汚染物質 | 影響 | 水と土壌への有害な汚染物質の排出 |
| 廃棄物 | 依存 | 固形廃棄物の浄化 |
| 廃棄物 | 影響 | 固形廃棄物の発生と放出 |
| 生物種 | 影響 | かく乱(例:騒音、光) |
そして、さらにこれらの優先地域のうち、青海工場のエネルギー源として重要な水力発電の集水域に分布する森林と、地元住民の憩いの場が隣接する田海工場緑地については、状況を確認するため調査を開始いたしました。
集水域の様子
水源涵養林の自然環境調査
地元住民の憩いの場:田海ヶ池と工場
田海工場緑地の自然環境調査
田海工場緑地で確認した希少種ナツエビネ(ラン科)
このように自然への依存・影響が強い自然資本のカテゴリーについて、依存している生態系サービスに変化を及ぼす要因や、工場操業が自然資本に与える影響を整理、考慮したうえで、より優先して取り組むべき依存・影響に係る課題を検討しています。
検討にあたっては、関係機関との連携や地元の自然環境の専門家とのコミュニケーション等を大切にして、デンカグループとしての具体的な環境保全活動につなげていきます。
| 事業と自然との接点 | 自然への依存・影響 | ||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| バリューチェーン | 拠点・施設名 | 事業活動 | 対象区域等 | 自然環境との関わり | 依存 | 影響 | 生態系の完全性 | 生物多様性の重要度 | 水ストレス |
| 原料調達 | 水源涵養林 | 水源涵養 | 姫川など上中流域 | 水力発電、工業用水のための水源は、生物の重要な生息地を利用している | ○ | ― | 高 | 高 | ― |
| 堰 | 取水 | 姫川・青海川・海川・早川 | 姫川等の河川に取水堰を設置している | ○ | ○ | 高 | 高 | 高 | |
| 送電線 | 送電 | 送電線周辺 | 鳥類の生息環境に送電線を設置している | ― | ― | 小 | 大 | ― | |
| 加工製造 | 工場 製造施設 | 加工製造 | 工場及び周辺 | 廃棄物の保管場所周辺に二次林、青海川がある | ― | ○ | ― | 高 | ― |
| 取排水は青海川を利用して行われている | ○ | ○ | 高 | 高 | 高 | ||||
| 工場緑地は二次林に面し、一部を緑地としても利用している | ○ | ― | 中 | ― | ― | ||||
| 水力発電施設 | 発電 | 発電施設周辺 | 姫川等の河川水を利用して発電している | ○ | ― | 小 | 小 | 小 | |
当社は、2024年8月に、生物多様性に関する国際イニシアティブである自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature related Financial Disclosures:TNFD)のフォーラムにメンバーとなりました。

当社は2024年10月に「経団連自然保護協議会※」に入会し、生物多様性宣言イニシアティブを通じて生物多様性への社会的な貢献を行います。
当社は、ポリスチレン樹脂を二軸延伸したシート「BOPS」の特性である透明性・剛性・食品安全性を維持しつつ、バイオマス由来の原料をマスバランス方式により割り当てた「バイオマスBOPS」を販売しております。
本製品は、リサイクル原料やバイオマスなどの持続可能な原料を用いた製品をサプライチェーン上で管理・担保する国際的な認証制度であるISCC PLUS 認証を受けた製品群です。
当社は、化石資源の使用を抑制し、再生可能な資源の活用を促進することで、生態系への負荷低減や生物多様性保全に配慮した製品開発および持続可能な原料の利用を実現し、循環型社会の実現と自然環境との共生に貢献してまいります。
当社は、国内事業所9拠点を含む地域の生物多様性の保全のため、30by30アライアンスや気候変動イニシアティブなどのイニシアティブへの参画をはじめとした、さまざまな活動を通じて、政府・自治体・企業・地域コミュニティと協働しています。
当社グループは、資源循環ブランド「D-NODE™」のもと、ポリスチレンのケミカルリサイクル技術を活用し、資源価値の最大化と廃棄物削減を両立する循環型モデルを構築しています。千葉県市原市・地域住民・東洋スチレン(弊社グループ会社)との官民連携により、公共施設14拠点で使用済みポリスチレンを回収し、分別精度85%以上の対象品を再資源化することで、焼却処理と比較してCO2排出量を約40%削減します。さらに、この取り組みは廃棄物の適正処理による自然環境への負荷低減を通じて、生物多様性保全にも寄与しています。国内最大級のポリスチレン生産能力を持つ当社は、社会的影響力を活かし、今後は処理能力の拡大に加え、自治体・企業・地域コミュニティとの協働を深めることで、持続可能な資源循環と生態系保全の両立を推進していきます。
渋川工場では、工場の位置する中村地区の用水組合とともに、工場敷地内および隣接地域の農業用水路の清掃活動を行っています。この活動は毎年田植え前に実施されており、農業用水の安定供給、水田の保護、稲作の支援に寄与するとともに、水田に生息する多様な生物の生態系維持にも貢献しています。
水路のゴミや草取り、土砂・藻の除去の様子