Environment 環境

生物多様性への対応

2025年8月更新

生物多様性への対応

生物多様性に関する考え方

自然環境との共生は、気候変動対応と並び持続可能な社会の確立に向けてその重要性が高まっており、国際的な情報開示の枠組みづくりが本格化しています。
デンカグループは、ESG基本方針に「環境負荷低減と生物多様性の保全・保護」を掲げています。本方針のもと、事業活動に伴う環境への影響を把握し、生物多様性の維持・向上を目指してゆくことを目的に、TNFDが発行した提言書に則して、対応を進めています。

  • TNFD:自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosure)
生物多様性への取り組み

2022年9月から、TNFDのガイドラインで推奨されるLEAPアプローチを用いて、自社の事業活動と生物多様性の接点を見出し、優先課題を把握するという観点で取組みに着手しています。また、デンカの各事業所(工場)は日本の各所に散在し、その周辺の自然環境は様々であることから、各事業所(工場)が持つ自然環境との接点を調査しました(2023年4月~2025年3月)。

  • LEAPアプローチ:事業活動と自然との接点や依存・影響関係、リスクと機会など、自然関連の課題を科学的根拠に基づいて評価するための統合的アプローチ。4つのフェーズ(Locate、Evaluate、Assess、Prepare)で構成される。

生物多様性への取り組み

ENCORE分析および現地調査結果

ENCORE分析および現地調査結果

国内9拠点を対象に、各拠点の操業と自然環境との接点等を把握する、ENCORE(※2)分析や現地調査(下記「自然環境予備調査」参照)を行ってまいりました。
ScopingとLocateでの調査・分析の結果、より優先的に取り組みを深化させるモデル拠点として青海工場を選定し、青海工場に係る依存と影響、その要因関係を整理しております。今後は結果(Evaluate)をふまえ、リスクと機会を特定し、具体的な対策行動につなげてまいります。

  • ※1対象9拠点:青海工場、大牟田工場、千葉工場、美唄分工場、渋川工場、大船工場、伊勢崎(太田)工場、五泉事業所(新潟工場、鏡田工場)、デンカイノベーションセンター
  • ※2ENCORE:セクター、サブ産業で絞り込み、自然にどのような依存・影響をどの程度与えているかを確認する分析手法
自然環境予備調査

国内事業所9拠点について、それぞれ環境データ(工場周辺における生物多様性にとって重要な地域の有無、生態系の完全性が急速に低下している地域の有無等)を整理するとともに、立地や操業活動の観点から自然環境との接点を現地で確認いたしました。
また、地域に根差した取り組みを検討すべく、拠点が立地する行政との意見交換も進めており、現在はデンカイノベーションセンターが所在する東京都町田市と、希少植物保全のための活動について協議しております。

イノベーションセンターの立地環境の確認イノベーションセンターの立地環境の確認

渋川工場の排水経路の確認渋川工場の排水経路の確認

千葉工場内の緑地環境千葉工場内の緑地環境

イノベーションセンター内に自生する希少種イノベーションセンター内に自生する希少種

五泉事業所に近接する河川環境五泉事業所に近接する河川環境

自然環境予備調査の対象拠点と対応事項
拠点 環境データ整理 現地確認 自治体ヒアリング 備考
青海工場 地域の自然環境、動植物について地元の有識者にインタビューを追加で実施
大牟田工場  
千葉工場  
美唄分工場  
渋川工場  
大船工場 工場稼働停止予定のため自治体ヒアリングは不実施
伊勢崎(太田)工場  
五泉事業所
(新潟工場、鏡田工場)
 
デンカイノベーションセンター  
青海工場が該当するセクターの自然への依存・影響の調査・分析(Scoping~Locate~Evaluate)

青海工場が該当するセクターでは、「水」「温室効果ガス」「汚染物質」「廃棄物」「生物種」のカテゴリーに関連する生態系サービスへの依存や、自然資本への影響が強いことを把握しました。そのような自然と青海工場の操業において接点がある地域は、特に注意が必要な地域として「優先地域」に特定しました。

青海工場が該当するセクター(業種業態)において生じやすい生態系サービスへの「依存」「影響」の要因種別
依存/影響のカテゴリー 依存/影響 依存している生態系サービス/影響をおよぼす要因
依存 水流調節
依存 水供給
依存 水の浄化
影響 水使用量
温室効果ガス 影響 温室効果ガスの排出
汚染物質 影響 水と土壌への有害な汚染物質の排出
廃棄物 依存 固形廃棄物の浄化
廃棄物 影響 固形廃棄物の発生と放出
生物種 影響 かく乱(例:騒音、光)

そして、さらにこれらの優先地域のうち、青海工場のエネルギー源として重要な水力発電の集水域に分布する森林と、地元住民の憩いの場が隣接する田海工場緑地については、状況を確認するため調査を開始いたしました。

集水域の様子集水域の様子

水源涵養林の自然環境調査水源涵養林の自然環境調査

地元住民の憩いの場:田海ヶ池と工場地元住民の憩いの場:田海ヶ池と工場

田海工場緑地の自然環境調査田海工場緑地の自然環境調査

田海工場緑地で確認した希少種ナツエビネ(ラン科)田海工場緑地で確認した希少種ナツエビネ(ラン科)

このように自然への依存・影響が強い自然資本のカテゴリーについて、依存している生態系サービスに変化を及ぼす要因や、工場操業が自然資本に与える影響を整理、考慮したうえで、より優先して取り組むべき依存・影響に係る課題を検討しています。
検討にあたっては、関係機関との連携や地元の自然環境の専門家とのコミュニケーション等を大切にして、デンカグループとしての具体的な環境保全活動につなげていきます。

事業と自然との接点 自然への依存・影響
バリューチェーン 拠点・施設名 事業活動 対象区域等 自然環境との関わり 依存 影響 生態系の完全性 生物多様性の重要度 水ストレス
原料調達 水源涵養林 水源涵養 姫川など上中流域 水力発電、工業用水のための水源は、生物の重要な生息地を利用している
取水 姫川・青海川・海川・早川 姫川等の河川に取水堰を設置している
送電線 送電 送電線周辺 鳥類の生息環境に送電線を設置している
加工製造 工場 製造施設 加工製造 工場及び周辺 廃棄物の保管場所周辺に二次林、青海川がある
取排水は青海川を利用して行われている
工場緑地は二次林に面し、一部を緑地としても利用している
水力発電施設 発電 発電施設周辺 姫川等の河川水を利用して発電している
  1. 生態系の完全性:自然環境(地域)が持つ種の豊かさ、絶滅リスク、生態系自然資本の充実度の評価
  2. 生物多様性の重要度:法的、国際的な保護区域である、固有生態・絶滅危惧種生息地であるなど地域の重要度の評価
  3. 水ストレス:自然環境(地域)が持つ水(淡水)の供給量に対する使用量の多寡についての評価
自然への依存・影響を考慮した、今後具体化する環境保全活動の例
  1. 水力発電は、「温室効果ガスの発生」を防いでいるが「水流調節サービス」に依存している。
    →「水流調節サービス」(水源の維持、水源を涵養する森林の健全性)を確保する。
  2. 青海工場の操業に伴う「音や光による生物へのかく乱」という影響が、操業面で環境配慮を強いられたり、生態系サービスの劣化をまねく恐れがある。
    →騒音や光の影響低減について考慮する。
  3. 青海工場の操業に伴う「固形廃棄物の発生と放出」が、処分場拡大などによる陸域の環境改変を起こす恐れがある。
    →現状実地している対策のほかに新しい対策を考案する。
TNFDフォーラムへの参画
  • 当社は、2024年8月に、生物多様性に関する国際イニシアティブである自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature related Financial Disclosures:TNFD)のフォーラムにメンバーとなりました。

  • TNFDフォーラムメンバー

経団連自然保護協議会への参加

当社は2024年10月に「経団連自然保護協議会」に入会し、生物多様性宣言イニシアティブを通じて生物多様性への社会的な貢献を行います。

  • 経団連自然保護協議会は途上国及び国内の自然保護活動を支援するとともに、企業の自然保護活動を促進する目的で1992年に設立された団体であり、2024年11月時点で141社の企業が会員となっております。
生物多様性を守る地域活動

渋川工場では、工場の位置する中村地区の用水組合とともに、工場敷地内および隣接地域の農業用水路の清掃活動を行っています。この活動は毎年田植え前に実施されており、農業用水の安定供給、水田の保護、稲作の支援に寄与するとともに、水田に生息する多様な生物の生態系維持にも貢献しています。

水路のゴミや草取り、土砂・藻の除去の様子水路のゴミや草取り、土砂・藻の除去の様子

株式会社ディ・エフ・エフ, デンカ株式会社 CSR・広報室, デンカ株式会社 IR室, 星和ビジネスリンク
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