特定非営利活動法人 循環型社会研究会
理事 山口民雄
本第三者意見は、レポートの制作過程で提出した私のコメントをベースにした意見交換を経て執筆しています。意見交換では、コメントに対し誠実な対応がされており、今後、報告書の一層の改善がされるとの確証が得られました。また、定型的な開示が現実を正確に反映できない事例等の紹介もあり、私自身も大きな気づきがあり参考になりました。 本レポートで高く評価するのは以下の3点です。
第1は、さまざまな「改革」の成果が取り組みの意欲とともに示されたことです。ダーウィンの言葉に「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」とあります。視界不良の渦中にいる現在、これまでの成功体験は通用せず、新たな経営戦略とその実現のための方策が求められています。「真に社会に必要とされる企業だけが生き残る」という危機意識を持ち、成長戦略で示された事業構造改革や経営構造改革はこれらの要請に応えたものであり、デンカが「変化できる者」であることを示しています。藤原社外取締役の「私は当社に発展途上の成長企業としての魅力を強く感じています」とのメッセージは本レポートの多くの読者も共感するでしょう。
第2は「環境」についても大きな改革が行われたことです。2019年版では、ESG経営の1つとして取り上げられていましたが、本レポートでは成長戦略、事業戦略と並んで、しかも、戦略の冒頭に環境戦略として記載されました。明確にはその意味は記載されていませんが、この位置付けはSDGsのウエディングケーキモデルを想起させます。すなわち、経済は社会に支えられ、社会は環境に支えられて成り立っている、との認識です。そして、気候変動に対しては2020年10月のわが国の「カーボンニュートラル宣言」に即応して同様の目標に向けて走り始めました。フォーキャスティングとバックキャスティングを組み合わせ、新たな2030年、2040年の目標を打ち立て、実現に向け取り組みを強化していただきたいと考えます。また、TCFDへ賛同を表明され、シナリオ分析によるリスクと機会が検証されました。次年度以降、4つの中核的要素(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標および目標)を的確に記載することと不十分な開示はリスクを伴う場合もあることに留意下さい。
第3は、Purpose(存在意義)を具体事例とともに示したことです。SDGsの示す2030年の世界に向けて「責任と貢献」のタイトルの下に「SDGsの目標12『つくる責任、つかう責任』を中心に、サーキュラーエコノミーの考えに基づいて、デンカグループの課題や果たすべき社会的責任」が描かれていますが、Purposeを読み取ることができます。Purposeは現在、経営において重要なキーワードになってきています。それは、仕事の意味を見出した従業員は、より多くの仕事を高度にこなし飛躍的に成長することが立証されているからです。利益よりもPurposeを重視することはサステナビリティを獲得するためには欠かせません。IIRC(国際統合報告審議会)は「purpose beyond profit」(企業の存在意義は利益を超える)というレポートを公表し、Purposeを有する企業は収益性が高く、より時価総額が大きいことを示しています。ぜひ、従業員の方も熟読し、確信にまで高めていただきたいと思います。
今後のレポートの質的向上に向け検討いただきたい事項もあります。それは"マテリアリティの特定”です。現在のマテリアリティは2017年にGRIガイドラインに基づいて特定されたもので、一般的には「CSRの重要課題」を特定するものと位置付けられています。そのため「経営計画Denka Value-Upとの関係性をより明確にするため、2020年度よりマテリアリティの定義を『CSR最重要課題』から『経営最重要課題』と改め」た、と考えます。この定義変更は多くの方々の賛同を得ることができると思いますので、この定義に基づいて新たなマテリアリティを特定していただきたいと思います。ちなみに、IIRCのフレームワークにおいても、マテリアリティは「事象が、短、中、長期の組織の価値創造能力に実質的な影響を与える場合、重要性がある」と定義しています。「経営最重要課題」とはこの定義そのものではないでしょうか。
また、終息は全く予期できませんが、2021年版ではCOVID-19への対応を総括的に記載いただきたいと思います。パンデミックへの対応能力は組織のレジリエンスを示すものであり、統合報告書には不可欠と考えます。必要な記載項目は、コロナ禍での「経営環境の変化と対応」、「機会とリスク」、「働き方改革を含む感染症マネジメント」、「資本財務戦略」などと考えます。
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