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2019年

「デンカレポート2019」第三者意見

特定非営利活動法人 循環型社会研究会 理事 山口民雄

特定非営利活動法人 循環型社会研究会
理事 山口民雄

本第三者意見は「デンカレポート2019」とウェブの「CSR情報サイト」を拝見するとともに意見交換を踏まえて執筆しています。

現在はVUCAの時代といわれています。VUCAとは「Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性:Ambiguity:曖昧性」を併せ持った状況で、企業の行く末を示すには困難な時代に直面しており、何を大切にし、何を基準に判断していくかという視点が重要です。本レポートにはこの時代をブレークスルーする思想、方向性、具体的なプロセスが記載されており読者のさまざまな懸念を払拭させています。

その代表例がスペシャリティー化によって「全く違う会社に生まれ変わる」ことです。スペシャリティーの定義を明確にし、2022年度に事業の割合を90%にするという野心的な目標を掲げ、山本社長が先頭に立って社内の意識改革を促すことを明言されています。さらに、事業ポートフォリオの変革や革新的プロセスの導入など読者に目標達成を確信させる施策が打ち出されています。

ESG経営もVUCAの時代を生き抜く有効な経営と考えます。後述するSDGsのウエディングケーキモデルでは経済は社会に支えられ、社会は環境に支えられて成り立っていることを示しています。この発想を経営にビルトインしたのがESG経営ともいえます。貴社のスペシャリティー事業の定義を拝見すると「ESGの取り組みに整合し、独自性と高付加価値を兼ね備えて、外部環境に左右されにくく、トップクラスのシェアを有する事業、および近い将来にその可能性を有する事業」となっており、定義の冒頭にESG配慮を置いておりESG経営実践の強い想いが伝わります。また、研究開発者の発言に「私は1人の研究者として、環境負荷をより減らす高効率の生産方法を追求することが技術開発の前提であると思っています」とあるように、環境を毀損する新製品開発ではいけないというESGを大前提にする発想が従業員に浸透していることが分かりました。こうした浸透は、成長ビジョンの一つである「健全な成長」を働き方改革以外の側面から促すことと思われます。

なお、技術の持つ負の側面(ネガティブアセット)も看過できないレベルになってきており、その軽減と解消が課題になってきていることから、自社の技術をESG経営の視点から検証され報告されることを期待します。

SDGsへの取り組みも山本社長が「SDGsとは非常によくできた羅針盤」といわれたように、VUCA時代の「羅針盤」でもあります。本レポートでは昨年より記載の歩を進め、「社長対談」や「SDGsへの貢献」で「The Denka Value」とSDGsの整合性、SDGs導入ステップが明らかにされました。2019年度はステップ2:優先課題特定と目標の設定、ステップ3:社内外のへの報告とコミュニケーションの実施を検討とありますので、着実に実施され歩を進めていただきたいと思います。報告に際しては「CSR、マテリアリティ、ESGといった要素がうまくつながっていなかったのですが、それらがSDGsで一つにまとまった気がします」(山本社長)とありますので、これらに加えて企業理念、経営計画などを有機的に結びつけた報告を期待します。また、優先課題として特定した目標、ターゲットの進捗状態が分かるSDGを主語にした報告も期待します。また、ステップ4の「新たなビジネスの創出と市場領域の拡大」は多くのステークホルダーが強い関心を抱いています。これまでのSDGs報告は、現在の取り組みや商品・サービスと目標、ターゲットとのマッピングを軸にしたものが大半です。しかし、数多い目標、ターゲットは国際社会が認識した課題であり、課題解決に資する製品・サービスの市場は極めて大きいことを示しており、ステップ4の具体化が希求されています。「新事業開発部などで検討中」とありますので、その成果を心待ちにしています。

「CSR情報サイト」は統合レポートを補完する情報源として重要です。サステナブル投資が急速に拡大する中でESG情報が注目されていますので、各社の開示も積極的になり、利用者の便宜を図るさまざまな工夫もされてきています。本サイトにおいてもパフォーマンスデータや活動トピックスなど更新頻度の高いデータに加え、専門的な情報を掲載するとの説明を受けました。また、情報には更新日を記載するなど常に最新の情報を提供しようという熱意を感じます。

しかし、現状のサイトを拝見しますとESG経営を標榜する企業としては、開示項目、開示内容は不十分ではないでしょうか。レポート作成に参考とされているGRIスタンダードや「環境報告ガイドライン2018」とともに他社ベンチマークなどによって現在の開示状況を検証されてはいかがでしょうか。開示するリスクより開示しないリスクの方が大きい時代を迎えています。

  • 循環型社会研究会:次世代に継承すべき自然生態系と調和した社会の在り方を地球的視点から考察し、地域における市民、事業者、行政の循環型社会形成に向けた取り組みの研究、支援、実践を行うことを目的とする市民団体。研究会内のCSRワークショップで、報告書のあるべき姿を研究し、提言している。
    URL:http://junkanken.com/
デンカ株式会社 CSR・広報室, デンカ株式会社 IR室
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