2023年10月更新
この4月よりデンカの経営計画「Mission 2030」(略称:M30《エムサーティ》)がスタートしました。この計画における、社外取締役の皆さんの想い・評価、そして、企業の持続的な成長の実現に向けた課題などを客観的な立場から意見を語っていただきました。
山本:今回の「M30」を作り込んでいく過程において、最初に経営計画のベースとなるビジョン・プロジェクトが編成されました。この策定プロセスは、会社全体を巻き込んでいく意味でも、とても重要だったと思います。次世代を担う若手社員が時間をかけて練り込んだビジョンが、社外取締役を含む経営層へフィードバックされ、若手社員の想いを発展させるという観点からも良い連関がありました。
福田:そして、「M30」の目標においては、今までの延長線上ではとても達成できない意欲的な数字が示されています。この非連続的な目標が、若手中心の議論の中で出てきたところが、とても良いと思います。
的場:「M30」が素案の段階で、ボトムアップで上がってきたのは非常に良かったと思います。ただ、取締役会では、限られた時間の中では、議論というよりも、意見を述べるというような形になりがちでした。ブレスト的な感じでもいいので、最初に素案を作った社員と自由に議論をするような形があると、もっと良くなると思いました。
山本:わたくしは、経営計画におけるコンセプトの重要性を提言しました。「未来は言葉、未来は制度」です。3年、5年、10年後の世界の化学業界がどういう方向にいくのか。その中で日本は、そして当社はどうあるべきか。戦略を実行する上で最も重要なのは、そのコンセプトを言葉にして共有することです。「未来は言葉」によって生み出されるからです。
そして、「未来は制度」。目標達成を目指してどういう制度を作り、インセンティブを設けるかが大事です。制度を正しく作ることが、目的に到達するために必要です。目標だけで、あとは頑張れと言うだけでは、組織は目指す方向に進まない。最初は制度が整わないこともありますが、絶えずそういうマインドセットを持つことの重要性を、度々提言しました。
木下:中長期的な事業計画では、現状のビジネスの持続性と、新しいビジネスモデルの構築に関する議論が基点になります。今のビジネスは2030年までやれるのか、生き延びていくには、どういうビジネスモデルを創出していくのか。これは、全ての会社において言えることです。そして、当社のような100年を超える企業では、今やってること、やってきたことを大切にすることも必要ですが、全ての事業が収益に貢献しているかというと、そうではありません。時として決断をしなければならない。私からは、「M30」の策定において、そういうポートフォリオの実効性ある議論が行われるよう、提言しました。
福田:前経営計画「Denka Value-Up」では、セメント事業撤退を判断しましたが、そういったポートフォリオの入れ替えをやっていかないと、「M30」は達成できません。2030年度の高い目標達成のためには、さらにスピードを上げなければなりません。
的場:経営環境の変化が激しい中、計画どおりにいかないこともあります。最後までやり遂げなければいけないと、真面目に進めようとし過ぎることもあるかもしれない。社外役員としては、そのような時に、そこはもう進むべきではないと、より客観的な意見を述べる役割があることを意識しています。
福田:私たち社外役員からは、財務戦略部の設置(2022年5月)やROICのKPI化について、いろいろと提言をしました。当社は自己資本比率50%の優良会社ですから、外部資本や借入金を使い、レバレッジを利かせて、新しい事業を育てていくような発想が、社内に浸透することを期待しています。
木下:KPIの目標は、絶対に必要です。数値目標がない計画は、評価が曖昧になるためです。今回の財務指標では、ROEとともにセグメント別のROICもKPIに定めました。大切なことは、各事業部門の人たちがROICの目標を達成するために何をするべきか、能動的に考え、アクションを取ることです。
的場:そうですね。なぜその数字を目標とするのかという意識を持ち、一人ひとりができることをやっていくことが大事です。私たちも、執行部と一緒に考えていきたいと思います。
福田:当社の事業部門のうち、新事業開発を除く4部門では、伸ばすべき重点分野と課題が明確に示されています。例えば、半導体や電池の分野、ヘルスケアの分野などの課題は明確です。そして、その上で「M30」の高い目標を達成するためには、M&Aを含めた戦略投資に積極的に取り組む必要があります。当社ではこのM&Aで結果を出すことは中々難しく、十分な実績が上がっていません。
木下:オーガニックグロースはどの会社でも難しく、新しいビジネスに挑戦しても、全てがうまくいくわけではありません。そのために当社は、米国カリフォルニアの「ペガサス・テック・ベンチャーズ」と、CVC (コーポレート・ベンチャー・キャピタル)ファンドを設立しました。
このCVCを進めるうえで注意すべき点は、投資を検討する段階から、自分たちがどこまでリスクを取れるかということも含めて、関与していくことです。そうでなければ、デンカとしてのビジネスではなくなります。しかし当社の社員は、投資の観点で、新たなビジネスモデルをつくる経験が無く、知識も十分ではありません。だからこそ、今回の機会を生かして、失敗しながら、経験を積むことが大切です。取締役会としては、1つ1つのビジネスが進んでいる状況を確認しつつ、人財育成に注目していくことに、重要な役目があると思います。
山本:わたしは、「M30」を計画どおりに遂行していくための課題は2つあると思います。1つ目は、どれだけ健全な事業ポートフォリオを作り込めるのか。皆さんのお話の通り、既存事業の何を止め、何を強化するのか。それから新規事業をどうしていくのか。現場の人はみずからが携わってきた仕事に特別な愛着があるはずなので、客観性の視点から提言する役割があります。
そして、もう1つの重要な点が人財の育成と活用です。世の中の雇用環境がまったく変わりつつある中、外部人財の取り込み、人事の制度設計、人財育成のためのコストは、もっと必要になってくる。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(D・E&I)だとか、女性や外国人といった多様性への取り組みが、まだまだ、弱い感じがします。どういうことをやるべきなのか、新たな観点に立った提言の必要性を感じています。
的場:先ほど経営計画「Mission 2030」の成長戦略が意欲的であるというお話がありましたが、人財価値創造において設けられた目標と具体的な取り組みについては、やや物足りない部分があります。
山本:女性や外国人の管理職を増やそうという意識を、経営層は持っています。しかし、人的資本の目標達成には時間がかかります。取り組みをもっとスピードアップするために何をしたらいいか、意識的に考えないと、なかなかD・E&Iは進まないと思います。
的場:今までと全く違うことをやってみるくらいの覚悟が必要です。経営層だけでなく、管理職、現場を含めて皆でやっていく、というところが、大きな課題になると思います。
山本:当社は過去10年ぐらいの間、コーポレートガバナンスの面で、かなりの力を入れて取り組んできたと思います。社外役員からの要請に応えていろいろなコーポレートガバナンスの組織が出来ました。社外役員と執行役員、その下の組織との情報共有の在り方は、大きく変わりました。
木下:それによって、われわれの負担も、ものすごく増えているわけですね(笑)。議論の中身も、かなり核心に触れた議論が行われるようになっています。監査等委員会の事業部門に対する監査においても、工場、国内・海外子会社の現場に入って、それぞれの課題の認識を聞きながら、かなりの白熱した議論をしています。このことは私たちにも、現場にとってもとても良い機会になっていると思います。
的場:監査で事業所を訪問した際に現場の方々とお話しした時に感じることです。皆さんは真面目で、良い会社風土があると思うのですが、その一方で、職制を通じた形でないと話ができない、という面があるようです。もっと風通しが良く、自由に発言できる会社になるといいな、ということを感じます。
福田:伝統かもしれませんね。
的場:今までどおりじゃなくてもいい。垣根を取り払って意見が出てきて、それぞれの能力が「1+1=2」の足し算じゃなくて掛け算で増えていくと、もっといい会社になるのかなと思います。われわれも、現場の方と直接話す機会をもっと設けてもよいと思います。われわれは見てますよ、ということが伝わるような形になるといいと思います。
木下:わたしは、外部とのコミュニケーションについて、課題があると思います。理解を得ることはとても大切で、やってさえいればいいという時代ではありません。世の中に向けて発信しなければわからない。ウェブだけではなく様々なツールを使い、プロアクティブなコミュニケーションを取っていく。最終的にはSDGsに結び付いて、株主だけでなく、ステークホルダー全体に対するコミュニケーションの改善をしていただきたいと思います。
福田:まったく同感です。デンカはやっぱり今も、セメントと肥料の会社というイメージが強いですね。ヘルスケアについては、よく知られていません。素質をいっぱい持っており、もっと評価されるべき会社です。情報発信を強化したほうがいい。「M30」はもっと世の中に広まるべきだと思います。
木下:ただ単純に情報だけ発信するだけではなく、ステークホルダーの皆さんを巻き込む、という感覚でないと駄目だと思うのです。双方向のコミュニケーションで信頼関係を築くことが重要です。そうするとデンカのこの知名度も当然上がるでしょうし、優秀な人も集まってきます。
的場:デンカは底力があると思っています。それを機関投資家の皆さまにも、社内にも、しっかり伝えてくださいとお話ししています。
山本:そうですね。ESG経営が注目され、企業の社会的責任が繰り返し問われていますが、その本質は、当社のそれぞれの事業研究部門が切磋琢磨して収益力を伴った形で新しい事業を創造し、その運営を通じて、健全で持続可能な社会にいかに貢献できるかということだと思います。「M30」を社員に浸透させることが大事です。そして、社員それぞれの成長の実現と、この会社で働いていて良かったな、という雰囲気がつくられていけば良いと思っています。
(日時:2023年5月11日 場所:デンカ本社)
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